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「連ね歌」完成しました。 

「籠の中」が途中ですが^^;「連ね歌」の方が完成しました。
タブー視されがちなモチーフですので、嫌悪感を持たれた方が
いらっしゃるかもしれませんが、
これもひとつの「恋哀小説」として読んでいただければ嬉しいです。
愛ちゃんの視点バージョンもどこかで挟み込めればいいなあと思っています。

「籠の中」は、千絵さんとの対峙になります。
ちょっと手こずっているので、もうしばらくお待ちください
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連ね歌 後篇 

p018.jpg

愛ちゃんの様子がおかしい事に気が付いたのは、夏の終りでした。
私は、こういう仕事に携わってかれこれ10年程になりますが、
決して珍しい事ではないのです。
愛ちゃんは妊娠4ヶ月目に入ったぐらいだろうと診断されました。
体調管理の一環として、女性の生理日は、だいたい把握しているつもりでしたが、
愛ちゃんの場合は不順気味だったのと、
処理が自分でほとんど出来るので、注意が足らなかったと反省しています。

妊娠週数が進んでいるということで、犯人さがしよりも先ずは手術をという事になり、
愛ちゃんのお母さんに連絡をして、来てもらいました。
当然ながら酷く叱られましたが、こういうこともあることは覚悟していたとも言われました。
愛ちゃんは可愛い顔立ちをしていましたし、身体のラインも実に女らしいものでしたから、
今までにも危ない事が何度かあったようでした。
それに女の私からみてもフェロモンのようなものを感じるのです。

事の因果関係について、本人にも説明しました。
驚いたのは、お腹の中に赤ちゃんがいるという事に、愛ちゃんが気付いていたことです。
まだ胎動がある時期ではないと思うので、本能的なものなのでしょうか。
愛ちゃんは「赤ちゃんを産みたい」と言って泣きだしました。
出来ることなら産ませてあげたいとお母さんも涙を拭かれました。
確かにここに在る命を切り捨てる権利は、誰にもないと思います。
育まれた命が不幸せになると断定もできません。
第三者も交えて、私たちは何度も話し合いました。
愛ちゃんの気持ちをもっとも大切にしたのはいうまでもありません。
ただ、綺麗ごとではすまない部分は、愛ちゃんには理解できません。
その辺りの話し合いは、お母さんと愛ちゃんでしてもらいました。
離れて暮らし始めたとはいえ、お母さんと愛ちゃんの繋がりはとても大きなものでしたから。

愛ちゃんの手術は無事に終わりました。
妊娠が発覚してから、作業所は休んで実家で養生していましたが、
体調だけでなく気持ちが落ち着くまで、もう少しお母さんのところがいいだろうと
判断されました。
私の所に彼がやってきたのは、その頃でした。
学生ボランティアとして作業所を手伝ってくれていた青年でした。
彼は私の前で深々と頭を下げました。
「どうもすみませんでした」
搾り出すように出て来た声は震えていました。

彼は愛ちゃんの妊娠をどこからか聞いたようでした。
自分と愛ちゃんの間に起きた過ちをきちんと話してくれました。
最後まで出来なかったはずなのだけれど、もしかしたら・・・
彼はそう言って涙をこぼしました。
自分にできることがあれば、何かしたいのだとも言いました。
私は彼の誠実さと、そして若さに打たれました。
愛ちゃんは妊娠4ヶ月ですから、彼の話とは計算が合わないのです。
その事は彼には伝えませんでした。愛情の裏打ちのない、こういう「過ち」は二度と繰り返して欲しくないからです。

胎児の血液も保管してありますから、犯人探しは、そう難しくないと思います。
でもお母さんからの要望でもない限りは、やめておこうと思うのです。
私は愛ちゃんは相手を分かっているのだと思っています。

大空を、目指して高く羽ばたけど。
割れたとて、己の弱さ見せぬけど。
留まれず、飛べぬわが身が切なくて。
涙する、君にすべてを委ねたい。

愛ちゃんのノートに書かれていたものです。
詩なのか俳句なのか手紙なのかは分かりません。
愛ちゃんがここまでの文章を書けるとは思えないのですが、
愛ちゃんの字には間違いありませんでした。
もしかしたら何かを模写したのかもしれません。
ただ幼い心の中に芽生えた何かを本人が抱えきれなくなっていたことは
確かでしょう。
私はいろいろな意味で自らをもう一度省みながら、
愛ちゃんをしっかりと見守っていきたいと思っています。

終わり。
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