スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

拝啓 貴方さま 

019.jpg

付き合って2年の裕輔に、なにげに結婚話をした。
結婚話っていったって、友達の結婚式に行って、ミニのドレスが良かったから、
ミニが似合ううちに結婚したいなあとか、それぐらいの話だったと思う。
なのにいきなり険悪ムードに陥った。
お互いに昔の事とか引っ張り出して、大喧嘩した夜、
超久々にママから電話があった。
ママは去年パパと離婚して、新しい男と同棲してるから、
かれこれ半年ぐらい会っていない。
慌てふためいて要領の得ない会話をしばらく繰り返してから、
ようやく理解できたのは、峰子婆ちゃんがグループホームからいなくなったという事だった。

峰子婆ちゃんはママの母親で、足が少し悪い上に痴呆が進行したのと、
ママの離婚が重なったから、家では面倒みられなくなって、ホームに入った。
あたしも一回だけお見舞いに行ったけど、
普通に雰囲気のいい系で、看護士さんが24時間体制でついてるっていうし、安心していた。
行き先に心当たりなどあるわけがないし、だいたいここは東京で
あっちは熊本なのだから、飛んでいけるわけもないし。
それに今、あたしの頭の中は裕輔の事でもやもやしまくっていたから、
適当に返事をして切ってしまった。

翌朝、学校へ行く準備をしていたら、玄関チャイムが鳴った。
裕輔だ!昨日の事を謝りに来てくれたんだ!
ウキウキでドアミラーを覗いたら、みたことのない男の子が立っていた。
あたしと同じぐらいの年って感じ?の大学生風の男の子だ。
これが噂の家ナン?可愛い女の子に家に突撃する「家ナンパ」の話で、
友達の間で、昨日盛り上がったところだった。
「はい」
インターフォンで大人なしめの女子大生風に返事をしてみる。
「あの、澤本夏実さんですか?」
きたきた!って、もうフルネーム知ってるのか?って、ストーカーかよ?
「はい」
「あの、僕、小林っていうんですけど・・あのお婆ちゃんが」
お婆ちゃん?
小林君は困った顔をしている。
ドアチェーンをつけたまま、恐る恐るドアを開けた。
小林君の隣で、峰子婆ちゃんがニコニコしていた。

小林君は、峰子婆ちゃんにヒッチハイクされたらしい。
「ここまで行ってちょうだい」
タクシーの運転手に頼むみたいに、うちの住所を見せられたという。
去年の成人式でとった写真入り年賀状だ。
成り行き上、あたしは峰子婆ちゃんと小林君を部屋に入れ、
お茶を出したりした。
小林君は大学を卒業したばかりのフリーターで、全国を旅しているそうだ。
「急ぐ旅ではないので」
なんて言いながら、お茶を飲んでいる。
あたしはちょっと急ぐんだけどと思いながら、ママに電話をした。
でも家電は留守電になっていた。きっと探し回っているのだろう。
こんな時に携帯電話を持っていればいいのに!とむかついた。
何度勧めても、「そぎゃんこまかもん、使いきらんし、もったいなか」の一点張りなのだ。
(続く)
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。