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止まった時間 

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「あたし・・産みたい」
夕食のレトルトカレーを一口食べてから、可南子が突然言い出した。
レストランで注文を決めたみたいな、ブティックで洋服を選んだみたいな、
断定的ではあるけれど、ごく自然な口ぶりだったから、
僕は事の重大さに気づくのに、少し時間がかかった。
「それ、まじ?」
口をついて出た言葉は、今思えばかなり無神経だったかもしれない。
でも僕の頭の中は、それくらい混乱していたのだ。
避妊には気をつけていたから、妊娠するなんて考えた事もなかった。
そういえば結婚を望む女性が、こっそりコンドームに穴を開けるという話を
聞いた事がある。さすがに口には出さなかったが、ぼんやりとそんな事まで考えていた。
「亮ちゃんの子だよ」
どうしてわかるんだ?切り返さなかったのが、精一杯の理性だった。

僕たちは、一緒に暮らすようになって半年が過ぎていた。
僕の毎日は一人暮らしの時とたいして変わらず、
バイトに行って、バンドの練習をして、
バンド仲間と酒を飲んでは夢みたいな夢を語り合って、
夢みたいな夢を持っていることだけで、満足していた。
でも可南子の事は、ごく当たり前に愛していたつもりだったんだ。

それからの僕たちは、何もかも噛みあわなくなってしまった。
本当はずっと前から、噛みあっていなかったのかもしれない。
可南子は毎日泣いていたし、僕は怒ってばかりいた。
可南子がいなくなって、僕は正直ほっとした。
夢みたいな夢しか見られない僕が、
父親になるなんて到底無理な話なのだ。

気がついてみたら、僕の時間は、あれから止まったままだ。
夢みたいな夢すら見られなくなって、僕は何処へも行かれない。

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コメント

白から黒へ、黒から白へ

ここにたどり着くまでに、女は相当考えているわけですよね^^;
角を取って全部一気にひっくり返すのか、徐々に攻めていくべきか・・
戦略は決して見せないようにしなくてはならないし。
そんな女に結果、翻弄されてしまった男の話です(笑)

新津きよみさは、読んだことないです。
今度、チェックしてみますね。

白黒つけてよ

冒頭の台詞って明暗を分けるよね。
切り札になるか、自爆するか・・・。
言わせるか、投げつけるか・・・。

新津きよみの小説「決めかねて」
にもそんな決断をする女が登場するよ。



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