スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

籠の中(2) 

024.jpg

僕は千絵を捜し歩いた。
探し当てたからといって、元通りになるものなど何もないことは分かっていた。
それでも僕と千絵の間にあった僕が気付かなかった溝を、確認したかったのだ。

「元亭主なら、知ってんじゃない?」
事も無げにそう言ったのは、千絵と何度か一緒に来た事があったスナックのママだった。
「えっ?・・あの、千絵は結婚してたんですか?」
ママは煙草に火をつけてから、間の抜けた質問をしている僕の顔をまじまじと見た。
自分では分からないが、きっと悲壮感をビシバシと漂わせていたのだろう。
ママはフンと鼻を鳴らしてから、メモ用紙に電話番号をひとつ書いた。
「あたしから聞いたって言わないでよ」
右手でメモ用紙を僕の胸ポケットにねじ込みながら、左手ですばやく股間をまさぐり、
それから唇にキスをした。
情けない事に僕は泣いていたかもしれない。
ママは僕の背中をぐっと押して店の外に追い出した。
「あっ、そうだ」
扉を閉めかけたママが、僕の袖口を掴んだ。
「千絵って言ってもわかんなかったら、ゆうなって名前出してみな。夕方の夕に菜っ葉の菜で夕菜。ね、頑張って!」
そう言ってママは僕の肩をするりと撫ぜてから、ドアを閉めた。
どういう意味なのか、僕にはさっぱり分からなかった。
でも質問したり出来なかった。
いったい何が分からないのかさえ、分からなくなっていたのだろうと思う。
亭主になり損ねた男が、元亭主の男に電話を入れたのは、次の日の夜だった。「夕菜」という名前を出したかどうか、思い出せない。

待ち合わせをした喫茶店に、ダークグレーのスーツ姿で現れたその人は、
僕が思い描いていたよりも、ずっと大人の雰囲気を携えていた。
突然やってきた元妻の婚約者だという男に、戸惑ったりうろたえたりする様子はなかった。
差し出された名刺には、名門の塾の名前があり、主任講師となっていた。
前は坂木千絵という名前だったのかと、名刺を見ながら僕はぼんやりと思った。

「そうだったんですか」
僕の話をひととおり聞き終わってから、坂木さんはゆっくりと口を開いた。

つづく
スポンサーサイト

コメント

リーガイド

リーの検索サイト。リーファ、リージョン、シナリー、スーリー、シャリーなどリーに関する各種情報をお届けしています。 http://class.tallmadgetitan.com/

選択と集中と30代,40代の転職

選択と集中とは、経営戦略の1つで複数ある商品や事業部門を絞り込み、絞り込んだ商品や事業部門を集中的に強化することによって競争力を向上させ、企業全体の収益を高める経営戦略 http://sefure2.misterblackband.com/

"演繹的順序法と30代,40代の転職"

演繹的順序法とは、文章の構成方法の一つでM大前提・小前提・結論の三段論法で話を進める手法 http://sharpen.ellingtonrecords.com/

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。