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優しい声。 

009

Yシャツもスーツも皺が寄らないように脱ぐ。
私を乱暴に抱きよせながらも、
床に落ちたシャツを気にしてる。
「愛してるよ」
「佑子が一番だよ」
「大好きだよ」
愛しい唇からこぼれる聞きなれた優しい声。
でも私が欲しいのは、そんな言葉じゃない。

慌てて出て行った亮介の後を、今日はこっそりつけてみた。
終電の一本前、三両目の一番先頭に立ち、
ドアのガラスを鏡にして髪を整え、袖口の匂いを嗅いだりしている。
私の前では隙を見せない亮介が、隙だらけでそこにいる。

ドアの向こうに、明かりがひとつ増えた。
「ただいま」
かすかに聞こえた気がした。
大好きな優しい声。
手渡されるスーツの上着と脱ぎ捨てられるYシャツ。
きっと二度目のシャワーを浴びる。
はりさけそうな気持ちの、捨て場が見当たらない私。
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